前回の記事で、厚生労働省の改革に期待することを書きました。
人事制度に関して、若干加筆します。
0.免責
わたしは、以前労働省の方々と一緒に仕事をした経験があります。
そのときの記憶をもとに記事を書きます。
その記憶があやふやだし、また聞いた話も間違っている可能性があります。
その点をご理解いただきたく、あらかじめ触れておきます。
1.残業代は無い、あるいは雀の涙
当時、(そして若手の答申にもそう書かれていましたが)猛烈な残業でした。
民間人のわたしで月平均80時間超、職員はさらにやってました。
それでも残業代は出ない、か、雀の涙程度だそうです。
残業代がどうやって決まっていたか、というと、管理部門の職員が鉛筆なめなめで決めていたそうです。
- 職員Aは最近頑張っているから、残業代をつけてあげよう
- 職員Bは動きがよくないから、今月は無し
この箇条書きの文章は、当時管理部門以外の職員が想像や噂していたような話です。真実ではないかもしれません。
いずれにしても、事実に基づいた残業代は支払われていません。
客観的な労働時間の把握を企業に要請しているお膝元の厚生労働省が、これです。
人事評価のいくつかあるポイントの1つは、事実に基づき、成果や貢献を測定すべきです。決して、好き嫌いだとか合う合わないだとか、「あいつはなんとなく悪い印象があるから、ダメ」などとすべきではありません。
が、残業代の鉛筆なめなめは、そうであった可能性があります。
これでは、人は成長しないし、組織的な成果をあげることもできないでしょう。
2.稟議、決裁
予算や政策、事業など、実施するにあたって決裁(あるいは稟議など)を行ないます。
平たく言えば、上司の印鑑をもらうことです。
この数が、中央官庁だとものすごく多い。
みなさんの会社では、決裁完了までいくつの(何人の)印鑑が必要ですか。
たとえば、わたしは昔、全社員数が8,000人ほどの企業の本社にいたことがありますが、ヒラ社員(わたし)から社長決裁まで、
わたし→わたしの直属の上司→人事部長→社長
の4つでした。
ま、社長まで必要な決裁はほとんどありません。せいぜい人事部長までです。
それが、労働省ではいくつでしょうか。
案件にもよりますが、わたしが経験したのは16個でした。これは少ない方だそうです。
普通で20〜30、多いときは70〜80が必要だったりするそうです。鏡の紙(最も表にくる表紙)が印鑑だけで埋まってしまうらしいです。
これは、それだけの階層があるということではなく、関係する部署が多いということです。
たとえば、出費に関するものは経理部門(のヒラ社員→係長→課長補佐→課長)、広報が必要なものは広報部門(のヒラ社員→係長→課長補佐→課長)、人の異動が加わる場合は人事部門(・・・)が加わっていく、という調子。
そして、その印鑑は、コンピューター上ではなく、起案者がすべての人物のところに説明に行って、印鑑をもらうというアナログ。めんどくさいったらありゃしない。
人事評価って、その「印鑑をもらいに来た職員が、どう説明するか・説得力があるか」を評価しているんだそうです。
ほんとかウソか。
とにかく、ちゃんとした人事評価制度は事実上なかったようです。ほんとはあったかもしれませんが、職員が知っている、わかっている状態ではなかった。
残業代と一緒で、これでは成長は無いし、組織も弱体化します。
こんな状況だから、「内閣人事局」ができただけで官僚はヘナヘナになっちゃうのかな、って思いたくなります。
3.人の成長、組織の力の源泉は人事制度
人の成長、組織の力の源泉、根幹は人事制度です。
若手の答申によると、厚生労働省には多分これが無さそうです(あっても形骸化?)。
内閣人事局は言わずもがな、ちゃんとした人事制度を作ってあげてよ。
厚労省だけじゃなく、中央官庁全体の問題だろうから、人事院とかかな。
独立性を保つ必要があると思うけど、人事院だと内閣総理大臣の直轄だからアカンかな。
いずれにしても頼みます。
税金の無駄を無くし、効果的に使われること。
職員がモチベーションと体力を保ち、組織が力を発揮するために。
国民の生活がまともなものになっていくために。