総務の仕事として、あるいは管理職という立場にあると、メンタルヘルスの不調(いわゆるメンタル不全)やココロの病気、不調の相談を受けます。
そんな時、わたしが心がけていること、相談を受ける対応のベース的なものをご紹介します。この記事をテンプレート的に活用していただければ、と思います。
0.場所の用意
会議室、応接室など。
他の人に聞こえず、またその部屋にいることもあらわにならないような場所がいいと思います。相談内容によっては、他の人に知られるのを避けたい場合があります。
それと、座るときには斜めに座るのがいいです。
正面に座ると圧迫感があり、お互い視線をぶつける感じにするのはしゃべりにくい。斜めだと適度に視線をずらすことができたり、圧迫感を感じさせないようにすることができます。
1.お礼
こういう相談はなかなかしたいと思ってもできることではありません。
しかも、その相談相手を自分にしてくれたお礼。
また、相談のために時間を割いてくれたお礼を伝えます。
あなたが、役割として、あるいは衛生管理者などに選任されていて、こういう相談をするときは誰々と決まっていたとしても、不信感を持つ相手に相談することはありません。なので、あなたに相談してくれるということはありがたいことです。
2.アイスブレイク
中身に入る前に、アイスブレイク(氷を溶かす)でその場を和やかな雰囲気にしましょう。
こういう相談で最も大事なことは、相談を持ちかけてきた相手がしゃべりたいこと、本音を遠慮なく話してくれるような場を作ることです。
そのためには、その場をほぐすために、雑談をして場を和ませましょう。
なんでもいいです。天気のことでもなんでも。できれば、仕事や会社関係のことは避けた方がいいかもしれません。
3.傾聴
まずは、相手の話を聴きましょう。
批判・否定とか解説を加えることなく、まずは相手がしゃべりたいことをそのまましゃべってもらいましょう。
とにかく、聴くことに徹します。耳を傾け、一生懸命に相手の話を聴きます。
4.あなた自身は何をしたいのか、会社にどうしてほしいか
(この項目は相談の内容にもよるので、すべてのケースにあてはまることではありません。)
相手が何を言いたいのか、何を主張しているのか、どんなことを伝えようとしているのかわからない場合があります。
いやな上司に会社からなんか言ってほしいのか、仕事をしばらく休みたいのか・・・。
しゃべるだけでスッキリした、ということはよくある話で、悩みを話す=放すことができた、それだけで改善するのです。だから、無理に相手に何かを主張させる必要はありません。
「話しただけでスッキリした」だけで終わらない場合、相手自身に“自分は何を言いたいのか” “相談相手(あなた自身)に何を求めるのか” “会社にどう動いてほしいのか”を考えさせる時間が必要だと思います。
例としては、「で、あなたは会社にどうしてほしいですか」とか「医師から休職をすすめられた、ということですが、休めば回復しそうだと自分でも思いますか」などでしょう。
ここでは決して「会社を休んではいけない」ことを匂わせるとか、自覚を促すような言い方は避けましょう。「医者が言う休めばいいと思ってるの?」といった言い方、それはダメです。
そういうのが目的ではなく、相談者自身が混乱していたり、何を言いたいのかがわかっていなかったりするので、それを相談者自身に整理してもらうため、というのが目的です。
「いや、わたしの希望は特に何もありません。話をしただけでスッキリしました」
「わたしの置かれた状況をご理解いただけただけで、満足しました」
そういう結果であれば、そういう相談の場を設けたことだけで解決です。
5.相談者の周囲に配慮する
相談者が相談を持ちかけてきた事自体を、相談者の周囲が知らない場合があります。
例として、営業部のAさんが総務部のわたし(ブログ管理者)に相談をしてきたとしましょう。
普通に考えれば、Aさんは営業部内の中のいい同僚とか上司に相談するのが一般的です。そうではなく、総務部のわたしに相談してきたということは、悩みの元が営業部内にあるかもしれません。
営業部内の同僚とか上司とか。
そういう場合、Aさんは周囲に黙って総務部のわたしに相談を持ちかけているかもしれません。ですので、
「上司とか周囲に、この相談をしていることは伝えてますか」
「相談のために席を空けていることを知っている人はいますか」
など、Aさんに確認しましょう。
「上司には言ってます。上司が『総務部の●●に相談してきたらどうか』と言ってくれましたので、来ました」
「上司には言ってません。『総務部に呼ばれたので行ってきます』と言って席を空けました」
などなど。相手の周囲にも配慮しましょう。
6.セオリーの説明
メンタルヘルスのケア、解決、対応には順番があります。厚生労働省の指針です。
それを、必要に応じて相談者に紹介します。
リンク先から引用します。
- 「セルフケア」は、私たちが自分自身で行うことのできるケア。働く人が自らのストレスに気付き、予防対処し、また事業者はそれを支援すること。
- 「ラインによるケア」は、管理監督者が行うケア。日頃の職場環境の把握と改善、部下の相談対応を行うことなど。
- 「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」は、企業の産業医、保健師や人事労務管理スタッフが行うケア。労働者や管理監督者等の支援や、具体的なメンタルヘルス対策の企画立案を行うことなど。
- 「事業場外資源によるケア」は、会社以外の専門的な機関や専門家を活用し、 その支援を受けること。
1から4に進むにしたがって、症状、状況が悪い状態です。
「セルフケア」自分自身によるケアで改善するのが一番ですよね。その次がライン(職制)、いわば上司です。
上司がストレスの元凶になっていることが少なくないので、ラインによるケアは飛ばす場合もあります。
3の「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」は、わたしのように企業の総務部門にいて従業員の健康管理やメンタルヘルスの相談に対応するケースですね。
4は、企業内だけでは改善するのが困難で、医療機関の治療や支援を受けるパターンです。
頭が混乱したり、そもそもココロが不調な場合、「4つのケア」と言われても相談者は困るだけかもしれません。
一方、軽度だったり、そもそも話の根源は、自分自身で解決なり改善できるケースが少なくありません。
以上、わたしが「心の不調」「メンタル不全」に関する相談を受けるときにベースにしている法則的なものをご紹介しました。
相談の内容や企業、組織の特徴、相談者のキャラクターなどによって臨機応変に変えなければならないこともあるとは思います。上記は基本、ベーシックなものとして考えていただいていいと思います。