「非正規雇用」という雇用形態がありますが、この言葉にだまされないようにしたい、と常々思ってます。
1.「非正規雇用」とは雇用形態ではない
非正規雇用というのは、具体的には、
といった雇用形態を非正規雇用と言うのだろうと思います。
一方、「非正規雇用」って、言葉だけを解釈するなら
正規じゃない雇用
ということになりますよね。
派遣や有期雇用は正規じゃないのでしょうか。
そりゃ、安定的に雇用が続く、賃金も高いほうがいい、労働時間も長いほうが給与額が高くなるので良い、というのはあるでしょう。
が、人事・労務の現場では、
「気楽に仕事をしたい」
「家族の世話があるので、フルタイム勤務はできない」
「ひとつの仕事を深く、長くするのではなく、いろんな仕事、会社で仕事をするスタイルの方がいい」
という言葉をしょっちゅう聞きます。
逆に、無期雇用(いわゆる正社員)は正規、正義なんでしょうか。
現場にいると、こんな場面によく出くわします。
マレなケースではありません。
2.労働行政の方向
昔から、労働行政は非正規雇用を正規雇用に持ってこようという法改正をしてきています。
- 有期雇用契約は最大5年まで
- 派遣労働契約の業種を制限
などなど。
これも、前項同様、人事労務の現場では「どうかなあ?」と感じる場面が多い。
たとえば、こんなケース
企業側:5年を超えると無期雇用にしないといけない。だとしたら●●さんの雇用契約はここまで
労働者側:無期雇用となると、自己都合退職以外はその仕事・会社を辞められない。それは困る
労働者の側からみても、雇い主(企業)側からみても、労働行政の方向は疑問を感じることが多いです。
以下、わたしの仕事で実際に経験した事例、2つです。
- 子ども(第一子)が2歳のときに入社した契約社員の女性。子どもさんのお世話があるからフルタイム勤務は難しく、半日勤務として入社。労働契約法の改正で5年を超える有期雇用はできないため、正社員への変更を会社から彼女に申し出たが、「正社員は求められるものが深く、ある程度自由な働き方がいい」ということで辞退。20年近い勤務を終え、退社。
- 派遣契約で就労がスタートしたスタッフ。3年の満了前に、業務水準の高さや勤勉さからその職場のかかせない一員となり正社員への変更を検討するも、本人の希望が沿わず。
3.消費増税
消費税が8%から10%に上がりました。
国民にとっては、大きな費用負担です。
社会保障に使うために、だそうですが、現実はそうでもなさそう。
引用先のTwitter群が真実なのかどうかわかりませんが、安倍政権のことだから怪しいのは怪しい。(と思い込むのは良くないでしょうが)
企業の内部留保が463兆円(2018年)と過去最大だそうです。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49310220S9A900C1EE8000/
これを少しでも税源に出させればいいのに、あるいは労働者に出し(給与を増やし)、労働者(被雇用者だけではなく管理職に対しても。この記事全体についても同じ)の生活が豊かになるようにすればいいと思うんですが。
4.「非正規」という言葉が持つ威力
「非正規」という言葉には威力があります。
- 非正規は悪
- 非正規を正規のものにしなければならない
というベクトルを生んでしまう。
でも、現実の世界ではそればかりではない。(というのは上掲のとおり)
現実の世界を知らない人には、自然と「非正規雇用は悪いもの」と思わせてしまいます。
企業はためこまず、従業員に還元しよう
政治は、税金を正当な方法で取り扱い(納税、税務署、証憑書類、証拠)、正当な目的に使う
総理大臣は、海外のお友達の娘へのプレゼントごときに、何十億も使わないでほしい
総理大臣は、自分の支持者に税金を使わないでほしい、法違反をしないでほしい
そんな、普通のことを考えるわけです。
「じゃあ、おまえんとこはどうなんだよ?」
わたしの勤務先、そこそこ大きい給与改定(ベースアップ)を行ないます。
小さな企業ですから、ニュースになるほどではないですが。激しい労使交渉があったわけではないですが、水準が低い・利益は少しでも還元、という考え方から、です。
わたしは、企業の経営者の立場にはなく、ブランチの人事労務担当の管理職でしかありませんが、少なくとも職場の中では従業員の福祉や豊かな社会人生活が実現するための仕事をしていくだけです。
あ、それと大事なこと。選挙権、投票権で政治にしっかり関わること。