新米管理職が書き綴る人事労務の仕事の毎日

管理職・マネージャーになりたて、あるいはこれから管理職を目指そうという方に向けて、現役管理職のわたしが経験談を中心に参考になる話をします。

傷病手当金に注意:人事・労務担当者が気をつけるべきこと

この記事は、傷病手当金という制度に関して、採用担当者が気をつけるべきことという角度から書く記事です。

傷病手当金という制度の性格上、福利厚生、社会保険の担当の方にももちろん関係はするので、読んで無駄にはならないとは思います。

 

f:id:e-wave:20201020191356j:plain

 

1.傷病手当金について

 

まず、傷病手当金とは何かを書いておきます。

 

傷病手当金とは、私傷病により仕事を休む場合で、給与が支払われない分、その給与の一部(おおむね3分の2)を受給できるというものです。

健康保険組合が支給します。

 

私傷病とは、プライベートの病気やケガのこと。

仕事中の災害・病気や通勤中のケガは、それぞれ労働災害、通勤災害として労災保険法から支給されますので、対象外です。

 

仕事にまつわる病気やケガは労災保険が救ってくれますので、それによって救われないものについて健康保険が面倒見てくれる、というものです。

 

 

(1)支給額

先に書いたとおり、支給額は給与の3分の2と考えてください(厳密には少々ややこしい計算になりますが)。

 

(2)支給期間

支給の対象となる期間は、仕事を休み始めてから4日経った日の分からです。

5月31日(月)から休み始めたとしたら、6月3日(木)の日からが支給対象となります。

もちろん、休んだ分が支給対象となりますので、仕事に復帰して給与が支給されるようになったら、傷病手当金は停止します。

 

ずっと休んだらずっともらえるか、というとそうはいきません。

最長で1.5年です。

 

 

2.何が問題か、わたしの失敗談

 

傷病手当金について何が問題か、を理解していただくのに、わたしの失敗談を聞いていただくのが一番と思いますので、恥を忍んでご紹介します。

 

 

(1)不支給決定

社員Aを中途採用

入社から2ヵ月ほど経過したところで、体調不良に陥り「もう出社できません」と申し出てきました。

その原因のひとつが会社側の対応の不備にあったこともあり、その不備を改善することを約束して、彼には退職を待ってもらうことにしました。

 

入社したばかりで年次有給休暇はありませんので、病気欠勤。

会社は傷病手当金の受給をすすめ、手続きを行ないました。

医療機関の診断は「●●症」。

 

健康保険組合に申請しても支給までには時間がかかります。

健保はレセプトや医療機関への問い合わせも行なった上で決定しますので。

そこで当社は、傷病手当金の一時立て替えを行なっています。

彼にもそれを適用することとなりました。

 

約3ヵ月後、健保が支給の可否を確認する作業を開始。

医療機関、社員A本人、過去に在職した企業の健保等にも問い合わせた結果、不支給と決定しました。

 

社員Aに立て替えて支給していた傷病手当金は返還してもらう必要があります。

復帰を目指して彼もその気になっていましたが、当社の給与水準では返還が難しいということで他社に転職することとなり、当社は退職となりました。

 

(2)不支給の理由

なぜ不支給となったか。

 

彼は当社に入社する前の会社(の健保)で、すでに傷病手当金を受給していたのでした。

●●症で、です。

傷病手当金の受給期間は最大1年6ヵ月というのは上掲したとおりですが、その最長期間を受給、その後もしばらくは治癒はせず、治癒後に復帰。

復帰してから数ヵ月程度勤務したようですが、そこで退職していました。

 

復帰してからしばらく経てば、その後再度傷病手当金を受給できるケースもあるようです。

が、しかし、社員Aにはそれが適用されませんでした。

復帰が数ヵ月だったからです。

 

 

 

3.反省すべきこと

 

ツッコミどころ満載のエピソードですが、反省も含めひとつひとつ書いていきます。

 

(1)採用にあたって

採用試験、受験者側からすると転職活動ということになりますが。

受験者は、採用担当者や面接官に対し、「自分は採用されるに値する応募者」ということをアピールします。当然です。

なので、自分の傷病歴は隠そうとするでしょう。

 

採用試験において、採用したくない要素を持つ病気をしていたかどうか、採用担当者は可能な限り見極めたいところです。

 

社員Aの転職のきっかけとして、面接時に話していたのは彼の家族の事情によるものでした。

が、傷病手当金不支給の件でわかったのは、彼自身が病気していたという事実でした。

 

これがわかっていれば、傷病手当金立替の返金というトラブルの発生を未然に防ぎ、病気からの回復もできたかもしれません。

そもそも採用という判断をしなかったかもしれませんが。

 

最悪、採用の際に虚偽を働いたことで就業規則違反→解雇となる事例でもあります。

今回の場合、それも適用していい事例でした。

 

(2)傷病手当金申請

間違って採用したとしても。あるいは問題なく採用できた社員であったとしても。

 

傷病手当金の申請にあたっては、申請する社員に「過去に受給したことはなかったか」「病欠から復帰したのはどれくらいの期間だったのか」等をしっかり確認する必要があります。

 

今回、社員Aは隠そうとしました。

なんせ、採用試験の際に隠したのですから、嘘がバレることになることを恐れたわけです。

 

 

4.結果

 

当社の対応として、傷病手当金の会社としての立替は、原則行なわないこととしました。

また、採用試験としてもより慎重に判断することとしました。