新米管理職が書き綴る人事労務の仕事の毎日

管理職・マネージャーになりたて、あるいはこれから管理職を目指そうという方に向けて、現役管理職のわたしが経験談を中心に参考になる話をします。

川崎殺傷事件で、思い出したくないことを思い出しました。再発を防ぐことができるのか、管理職はどうあるべきか

川崎殺傷事件。

一人の男が十数秒という短時間に、十数人を殺傷。そのうち2人が死亡したという通り魔事件。

 

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事件現場に手向けられた花など

 

大変衝撃的な事件ですが、犯人らしき人物の報道が重なるにつれ、心配になることがあります。

以前、同じ職場にいた、とある同僚の存在です。彼女は今、何をしているだろうか。そもそも生きているだろうか。

 

 

 

 

1.病気にかかり、退職した同僚

 

※プライバシー保護のため、情報の記述はあいまいにします

※この記事や登場人物は、川崎殺傷事件とは一切関係はありません

 

その彼女は同じ職場にいた同僚でした。

当時わたしは、管理職の上司と彼女たち数名の間に立つ、サブリーダー的なポジションでした。

 

部署の全員で作成するマニュアル に取り組んでいるとき、彼女が遅れていました。

何度催促し「はい、わかりました」と反応するも一切手をつけない。

いよいよ納期が来て「納期が過ぎてもいいし、これまであなた自身が書いたマニュアルがあったでしょ。あれをそのままコピペするだけでいいから」と促すも、ダメ。

 

このマニュアル書くのに、なんか不具合を感じてますか。体調が悪いとかありますか。

 

この頃から、なにか心身の体調不良があるんじゃないかと疑い始めたわたしは、上のような言葉をかけたりもしていました。(周囲からは「甘い」と言われてたみたいですが)

 

(1)無断欠勤

それから彼女は、ときどき無断欠勤をするようになりました。

通常、当日に休暇を取る場合は、わたしたちの職場は管理職のリーダーに電話で一報を入れることにしています。この電話をせず、彼女は無断欠勤を重ねます。

その後、何度も上司が彼女に指導をしますが、電話はしません。

 

ある日も、朝出社してこない。上司から彼女に電話するも、出ない。これまでは電話に出て「すいません」と言っていた彼女、その日は出ない。

何かあったかもしれない。

上司と相談し、わたしは彼女の自宅を訪ねました。

 

古いアパート。彼女の部屋は日の当たる部分から奥の方にあり、通路が薄暗い。

いかにも“何かあった”かもしれないことが十分感じられる雰囲気。

呼び鈴を押すも、反応なし。ドアノブを回しても動かない。中にはいない。

 

彼女が通院していた病院へ言ってみる。

「彼女は転院して、今ここには来てないです」

事情を話し、転院先を教えてもらいその病院へ。

もう時刻は18時。待合室は薄暗い。

受付に聞くも「個人情報なので、教えられません」とのこと。それが普通。

んー、どうしようか。会社に帰るか・・・とトボトボと病院を出ようとしたところ、待合室の片隅に座っていた彼女。

 

→彼女の顔を見ることができたのは、これが最後になります。

 

(2)とある病名からメンタル不全へ、そして退職へ

彼女はとある病名の診断が出ました。欠勤の始まる前です。

その病名は、フィジカルな(メンタルとは関係のない、身体的な、という意味です)病気だと思ってましたが、その病状が悪化して、上記の無断欠勤も重なり、病欠することになりました。

その病名をその後よく耳にするようになりましたが、ある程度メンタルヘルス(メンタル不全)と関連が大きいような印象です。(その病気になった人は、その後メンタル不全に陥る、というケースが多く発生しているような情報を聞いたという意味です。)

わたしは医者じゃないので、わたしの無理解や、誤解を招く不安もありますので、その病名はここでは書きません。

 

そんなこんなで、彼女は最終的にはうつ病と診断されました。

 

健康保険等、諸々の手続きのため、彼女と会う機会を作ろうとしましたが、電話連絡も、そして会うこともできず、すべてご両親と行うことになりました。

「あと3ヵ月経過すると、自動的に退職になる」

という連絡をするも、彼女からの反応はありませんでした。

 

そして、就業規則で認められた病欠の期限を過ぎることとなり、ついに退職となりました。

 

退職の手続きも、彼女の両親と行いました。

 

(3)彼女の父親と母親

退職の手続きは、わたしと上司、そして彼女のご両親で行いました。

父親は事情を理解し、退職やむなしというスタンスで会社の対応に応じてくれました。

が、母親は「退職にいたったのは会社に責任がある」と言い、退職金の減額の撤回(彼女の退職理由は自己都合退職のため、減額されます)や損害賠償、さらには退職期限の延長などを要求してきました。

それには理由があります。

 

彼女本人は、「会社の同僚からのいじめ」「とある同僚の男性社員への恋慕」を親に訴えていたようです。

 

会社が調べたところによると、彼女は昔在籍した職場でミスが多く、会社にも高額の損害を出すこともしたことがあり、その都度彼女に仕事を教える先輩や上司から指導や教育を受けていたとのこと。それを彼女は「いじめ」ととらえていたようです。

 

「男性社員への恋慕」については、彼女はその男性(妻子あり)に一方的に好意を寄せ、その男性が異動で転勤したあとも想いを持ち続けていたようです。そして悪いことに、その男性も自分のことを好いている、と思いこんでいたようです。

 

いじめも妻子ある男性との相思相愛も、彼女の妄想。

後者については病気休職中に彼の住む地に彼を追いかけて行くということもしました。彼にその話を聞き、過去の事情を聞くと「一方的に好意を感じていただけで、自分は彼女のことをどうにも思っていなかった。彼女が勘違いする行動も一切していない」とのこと。

 

 

2.退職した同僚と、高齢の両親

 

彼女の家族は彼女と両親の3人だけ。

退職手続きの時点では、父親は高齢で、しかも時々病院に入院が必要な病気をされていました。

また、母親も病気まではされてなくとも高齢で、お二人とも歩くのがおぼつかないほどでした。

 

彼女を食事や体調なども含め面倒をみている母親は、退職にいたる事情は理解はするものの、家族を支える収入をなくすのはもちろん、彼女を不憫に思うこと、そして自分自身の体調が弱まっていくことへの心配もあったようです。

 

会社も、いくら就業規則に則った扱いとはいえ、心身不調で退職する彼女、高齢のご両親が今後どうなるのか、心配でなりませんでした。

 

地域の福祉制度等もあたりました。ご両親も当然調べておられましたが、ほとんど頼ることができる仕組みはないとのこと。

 

何もできず、彼女が我々のもとから離れていきました。

 

 

3.川崎殺傷事件

 

川崎市登戸で起きた殺傷事件。

ニュースでは、自殺した犯人は引きこもりとありました。

 

彼が殺害に至るまでに、それを止めることができなかったのだろうか。

 

その思いが、先に上げた同僚と重なりました。

 

 

同僚の話で言えば、会社にいる間、マニュアル作成の際、詳しく話を聞くことができなかっただろうか。薄暗い病院で彼女を見つけたとき、話を聞くことはできなかっただろうか。

 

 

川崎殺傷事件は、誰かが何かを施すことが可能だったのだろうか。わかりません。

「どうせ自殺するなら、一人で逝ってくれ」との言葉も、賛否があったようですが、どうとらえるべきなのかよくわかりません。

 

 

4.ワイドナショーでの松本人志の暴言

 

この記事を書いている日。ワイドナショーが放送され、川崎殺傷事件を取り上げていました。

 

「産まれてくる上で不良品って何万個に1個絶対これはしょうがないと思う」「こういう人たちはいますから絶対数。その人たち同士でやりあって欲しい」

 

ダウンタウン松本人志はこのような主旨の発言をしました。

わたしはその言葉が気になり、ツイートしました。

 

 

 

このツイートへの賛同、反論がありました。

大規模にも、賛否両論があがったようです。

 

松本を擁護する側の説明として「その言葉だけ切り取って論じている」「文脈からは言わんとすることはわかる」などがありました。「殺人犯は不良品でしょう」というのもありました。

 

わたしが松本の言葉に強烈な違和感を感じたのは、

 

  • 「不良品」という表現が、人間を品物にたとえた(ように聞こえた)こと
  • 人間に対して良か不良か、という見方をしてほしくない
  • 「その人たち同士でやりあえ」というのは、人の命の軽視である

 

といったこと。どのように解釈しても、擁護はできません。

 

裏番組で、爆笑問題太田光はこのように発言しています。

 

 

 

 

このブログの主要なテーマであるサラリーパーソン、管理職といった上に立つ立場の人には、部下の仕事の出来不出来は、本人だけでなく上司であり管理職にも責任があるということ。

法的にも、たとえば労働基準法では、会社側、管理者側に様々な責任が発生すること。

 

 

適性や向き不向き、持ち味などの違いはあれど、管理職たるもの、部下に可能性があることを信じ、育成、サポートをすべきと、自省も含め記しておきたい。