新米管理職が書き綴る人事労務の仕事の毎日

管理職・マネージャーになりたて、あるいはこれから管理職を目指そうという方に向けて、現役管理職のわたしが経験談を中心に参考になる話をします。

パワハラは誰が解決すべきトラブルなのか、上司?人事担当?

パワハラパワーハラスメント)は誰が解決すべきなんでしょうか。

これをお読みの新入社員、若手社員のみなさん、どう思います?

わたしが経験した事例をもとに、考えてみましょう。

 

※以下、わたしの職場で実際に起きた事案をとりあげますが、特定されないよう説明をぼかしたり事実とは異なる説明をします。

 

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1.とある若手社員の雑談

 

社員A:「Xさん、言葉がきついよね。パワハラだよ。Yくん、元気無さそう」

社員B:「そうだよね。人事の責任者とかが全然対応してなさそうなんだもん。Yくん、かわいそう」

 

若手社員ふたりが雑談しているのをたまたま小耳にはさみました。

AとBは入社してからまだ3〜4年目の若手社員。

Yは新入社員、XはYのトレーナー(教育係)として仕事を基本から教えているベテラン社員です。

 

若手社員は、どうやら人事の責任者がこの事態を解決すべきと考えているようです。

その職場では、人事の責任者とはわたしのことでした。

雑談ではわたしの名前こそ出さず「人事の責任者」と表現していましたが、わたしの上司は部長であり、わたしの下はすべて一般職(管理職ではないという意味)なので、わたしを指していることは明白でした。

 

 

2.パワハラを無視していたのか

 

社員Bが言うように、人事の責任者(わたし)は何も動いていなかったか、というとそうではありませんでした。

 

Xは2〜3年ほど前に同じような事態を引き起こしていました。

 

新人の教育係をしていて、教え方・言葉の使い方が荒っぽく、周囲がビクビクするときもあるほどでした。

当時のXの上司はXを注意し、少し改善しました。

しかし、完全に治ったわけではなく、そもそも日頃から彼自身のキャラクターがそういうもの(言葉は荒いが悪い人間ではなく、周囲は慣れていた)だったこともあり、問題は収束していきました。

 

Xと彼の上司の間では改善を要求するやりとりが複数回あり、その過程の中でXは「自分はそのようなやり方ができない。上司含め注意されることのどこが悪いのかがわからない」ということから退職を申し出ることまでありました。

 

そこで初めてわたしは、Xと彼の上司がやりとりをしていたことを知ったのでした。

その後、新人Yが入社してきて、上記に至ります。

 

 

3.パワハラとは

 

ここでパワハラについて言及しておきます。

 

パワハラとは、単に荒っぽい言葉だとか態度、強い口調などが問題ではなく、

  • 仕事ではなく人格を否定する
  • 悪意をもって行なわれる
  • 繰り返し、継続的に行なわれる
  • 就業環境の悪化、雇用への不安をもたらす

といった要素が必要となります。

 

逆に言うと、

  • 仕事についての強い口調での指導
  • 継続的ではない

のであれば、パワハラとはなりません。

 

Xについても、パワハラではなく、相手の社員に対し「仕事をしっかり学んでほしい、スキルアップしてほしい」という想いから発せられたものであり、悪意をもったものではありませんでした。

 

新人や異動して間もない社員など、まだ習熟していない相手に対し仕事の指導、教育を行なうのは当たり前ですが、その過程の中で、ついカッとなって荒々しい言葉を使うということはよくあることです。

ついカッとなって”は慣れてないトレーナー、マネージャーであればありえます。

そのすべてをパワハラと言っていたらキリがない。

 

継続的、執着的に特定の社員をいじめる、労働環境を悪化させる事象をパワハラとして厳しく取り締まります。

当然、“ついカッとなって”という事象も安易に見逃すわけではなく、何回も繰り返すことがないかどうか、上司や人事部門はチェック、ウォッチしています。

 

 

4.パワハラを解決すべき順番

 

回り道が長くなりました。

上記に上げた事例(XとYの関係、その数年前のXの事案)で言いますと、Xの上司たちが問題視し、彼に指導をしていたのでした。

 

わたしが考える、パワハラ(あるいはパワハラを想像させるような事象)を解決する、望ましい順番は以下のとおりと考えます。

 

  1. パワハラの被害者(上記で言えば、Y)
  2. Xの同僚や上司
  3. ハラスメント相談窓口(多くの場合、人事労務部門)
  4. 人事労務部門責任者
  5. トップ、部門長

 

 

まずは、被害者である人物が「ちょっときつい言葉なんで、直してもらえませんか」と相手に言うことです。ただ、これは難しいことです。そういうヘルプが言えるような関係であれば、パワハラなどと周囲が心配するような事態にはならない。

 

続いて、Xの周囲や上司が「Xの指導はきつい、そのままだとパワハラになってしまう」とXに注意したり指導したりする必要です。

 

それでも改善されず、Y本人や周囲が相談窓口に相談する。これで人事労務部門が動き出し、パワハラかどうか、事情をヒアリングし、人事労務責任者、職制(上司など)も交え事態を協議し、Xに指導することになります。

 

さらに、悪質な場合は、人事労務部門・責任者が調査、ヒアリングなどを進め、賞罰委員会を開催して、部門長に答申、処分が決定するといったことにもなります。

 

 

5.人事労務責任者は最後

 

というわけで、人事労務責任者が動くのは最後です。

ただ、賞罰に及ぶほどの事案であっても、人事労務責任者・担当者が動くのは水面下。

表立って動いているのがわかるようにはしません。

 

冒頭に紹介した、若手社員の雑談(「人事の責任者は動いていない」の発言)もいたしかたないところです。

実際に人事労務部門が動いていても、それがわからないように動きますから。

 

 

補足

 

社員Xは、現場仕事からいわゆる叩き上げで育てられてきた経歴がありました。

彼自身が厳しく育てられた経験者だったのです。

当時(30年以上前の時代)はそれが当たり前だったでしょう。

だからといって彼は、自分が受けた教育をそのまま新人に施そうと思っていたわけではなく、彼なりに自然に教育をしていたつもりでした。

 

彼のような経歴を持つ社員、古い考え方や習慣に固執する上役など、今後もハラスメントに関する理解を進めていきたいものです。