プロ野球選手、中田翔の暴力・無期限謹慎から電撃の巨人への無償トレードという流れ。
野球ファン、中田ファン、日本ハムファン、巨人ファンそれぞれにいろいろと感想があるでしょう。
企業の人事労務担当者であるわたしは、こんな感想を持ちました。
0.プロ野球球団を企業にたとえてみる
これらの動きを、民間企業にたとえて見ていきたいと思います。
無理がある話だとは思いますが、面白く見えてきます。
1.暴力:無期限出場停止は無期限出勤停止
暴力を起こしたことについて、日本ハムは無期限出場停止、謹慎という処分を言い渡しました。
これは、民間企業にあてはめると、出勤停止(無期限)ということになるでしょう。
普通の民間企業では、処分は甘い順番から以下のようになっているのが普通ではないでしょうか。
けん責(戒告)<減給<出勤停止<諭旨解雇<懲戒解雇
けん責は、始末書を書き、将来を戒めます。もうやりません、と書面で約束させるものです。
表には出ることはないし、給与も減るわけでもないし、ダメージはほとんど無いと言えると思います。
ただし、けん責を何回やっても悔い改めない(反省しない、何度もルール違反などを繰り返す)場合は、懲戒解雇になりえます。
減給は、その言葉どおり給与を減らします。
労働基準法に上限が決められてます。
ニュースで「そんだけしか減給しないの?それは無意味なんじゃ?」
と思われる方も少なくないと思います。法律で減らす限度が決められています。
それは、1日分の給与の半額まで、月額だったら10分の1まで、です。
1日の給与が1万円、月額30万円だったとすると、1日あたりの減額は5,000円まで。1ヵ月分減らすという処分の場合、3万円を減らすことしかできないわけです。
社長などが「3ヵ月分の報酬返上」などというニュースもあります。社長などの役員は労働基準法に守られる対象外のため、減らす範囲は大きいのです。
出勤停止は、出勤をさせない、出勤するなという処分です。
法で規定される上限はないですが、概ね数日間というのが一般的だと思います。
期間の長短は罪の重さ、戒めるべき度合いによります。
諭旨解雇は、本人の意志で退職させるものです。
本人と会社が話し合い、一定の期間を猶予することも場合にはありますが、退職願を書き退職です。
自己都合ではあっても、懲戒解雇とは異なり、普通の退職です。
そのため、退職金が支払われる場合があります。
懲戒解雇は、有無を言わさず解雇です。
退職金も支払われません。
最も重い処分です。
中田翔の場合、これらの処分の中にぴったりあてはまるものはありません。
強いていえば出勤停止でしょうが、期間が無期限の出勤停止というのは民間企業にはないため、微妙です。
出勤停止と諭旨解雇の間くらいでしょうかね。
2.無償トレード:自己都合退職から転職
中田翔は、日本ハムから巨人へ無償でトレードとなったようです。
企業では無償トレードは無いですね。
ヘッドハント等で企業から企業へ移り渡ることはあるけど、それぞれの企業がわかりあった上で、というのはありません。
強いていえば、師弟制度的な業界ではありえるでしょうか。
こいつはある程度できるようになったから、師匠、さらに鍛えてください
よっしゃ、預かろう
みたいな世界があるのかどうかわかりませんが。
今回のトレードは、野球界ならではという印象です。
転職はありえるとして、処分を受けたような人物を他の企業が採用するというのはめったに無いこと。
「前の会社で懲戒処分を受けたので転職活動を余儀なくされて、御社を応募します」
なんて正直なことを面接で言う応募者なんていないでしょう。
ありうるとすれば、処分を受けた(あるいは処分を受けることとなった)社員が自ら退職を申し出て退職、転職するという形でしょうか。
3.更生を託す
栗山「彼を鍛え直してください」
原「わかった、育てる」
どんなやりとりがあったかはわかりませんが、栗山監督が頼みこみ、引き受けたと言われている原監督。
トレードが発表された時点で、日ハムは中田への無期限謹慎処分を解除したことになるそうです。
で、巨人は日ハムの処分を継続しないで、中田を代打出場させました(8月21日)。
大丈夫でしょうか、こんなんで。
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中田翔の謹慎という処分、トレードで解除されたという納得されたものだとしても、そんなんでいいんでしょうか。
その処分には、野球という技術ではなく、人物として未熟な部分を鍛える・作り直す、という目的があっただろうと思います。
野球機構は、中田を更生させるべきだった。処分は単に不利益を与えるだけではなく、更生させるのも目的だから、今回のトレード、というか野球の世界は甘いと言わざるを得ません。
企業においても、解雇以外の処分は「将来を戒める」という意味合いが含まれます。
将来、そんなことをもう起こさないように、ということです。
減給や出勤停止とする処分は、単にいじめるとか人件費を削減するということではなく、「あなたが起こしたこのルール違反、不祥事はとても大変なことなのです」ということをわからせる意味合いが含まれます。
ガンちゃん、よく言った!
news.yahoo.co.jp
わたしの経験でも、
「出勤停止?日、反省があれば情状酌量でけん責」
という処分を下そうということになった事案がありましたが、ヒアリング(警察でいうところの事情聴取)を進める中で、悪いことをしでかしたという意識・感覚が全く見られない、ということから処分をより厳しく(出勤停止の日数を増やす)しました。そうしないとことの重大さをわからないだろう、ということです。
結局、その社員は自己都合退職を選びました。再就職は彼にとっては非常に厳しい、人間を作り直さないと、生活さえも立て直せなくなるでしょう。
4.“紳士の”巨人で更生できるか
巨人ファン、原監督ファンなんでしょうか。
「原監督なら、大丈夫」
「原監督しか、いない」
という声を聞きました、今回の中田翔のトレード。
さて、どうでしょうか。
巨人軍は紳士たれ、とは誰かの言葉らしいのですが、巨人のどこが紳士やねん?と思います。
昔から注目を集める球団ですから話題が多い、というのはあるかもしれませんけど、巨人の選手や監督には問題が多いですよね。
そもそも原さんも裏世界とのつながりが噂されたり、1億円の話があったり。
www.nikkansports.com
「勝つためには手段を選ばず、金を使い、若手をスポイル」
ネットで見かけた今回のトレードに対する評価。
そんな巨人軍には、中田はピッタリの人材だったといえます。
巨人はますますヒールに向かっていきます。
中田翔、巨人はもちろんですが、選手を教育できなかった栗山監督も、このままではダメです。
わたしが球団経営者なら、これらのみなさんにダメ出しします。